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多数決や行政の常識を疑う“アート”としてのブロックチェーン

社会の常識を疑う“アート”としてのブロックチェーンの側面について、メカニズムデザインの専門家でありBitcoinノードも運用している慶應義塾大学経済学部教授の坂井豊貴さんに聞きます。インタビュー前編のトピックは、選挙などの社会制度です。 このFLOC LOGの新連載「ソーシャルチェーン/Social Chain」では、ブロックチェーンのアートとしての側面またはサイエンスとしての側面について、識者へのインタビューを重ねて、“インタビューのチェーン”を紡いでいきます。

Bitcoinノードを運用する経済学者、坂井豊貴教授にインタビュー


坂井豊貴/さかい・とよたか
慶應義塾大学経済学部教授、(株)デューデリ&ディール・チーフエコノミスト。ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。メカニズムデザインの研究と不動産オークションへのビジネス実装に従事。著書に『多数決を疑う』(岩波新書、高校教科書に掲載)、『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『暗号通貨vs.国家』(SB新書)ほか。アジアで翻訳多数。

 

「メカニズムデザインとブロックチェーンの親和性は高かった」


FLOC松田:最初にブロックチェーンのことを知ったとき、坂井さんはどう思われましたか?

坂井教授:僕の専門分野である「メカニズムデザイン」では、1960年くらいから、ずっとディセントラリゼーション(Decentralization)、ディセントラリゼーションと言い続けているんです。一方で、ブロックチェーン界隈の人々も、ディセントラリゼーション、ディセントラリゼーションと言っています。それを見たときに、似た意識があるんだろうなと感じました。

 そこで時間をかけて勉強してみると、やはりメカニズムデザインとブロックチェーンの親和性は高かった。

FLOC松田:具体的には、どのように親和性が高いのでしょうか?

坂井教授:少しだけ回り道をして話します。2015年頃のことですが、茨城県つくば市が巨大な運動公園を造ろうとしたんです。総工費は約300億円。最寄駅から8キロほど離れていて、徒歩2時間。そんなもの300億円かけて造るべきかというと、まあ非常に怪しいですよね。しかし、行政がやるといった事業を止めるのは、ものすごく大変です。住民側が異議申し立てをする制度が、ろくに整備されていないからです。

FLOC松田:では、どうやって反対の意思表示をするのでしょうか?

坂井教授:1つのやり方が「住民投票」です。しかし日本では、住民投票を実施するハードルがすごく高いのです。短期間で山ほど署名を集めなければなりません。普通に生活している人がやるのはものすごく大変。

 署名を集められると、議会が住民投票をするかしないかを審議してくれます。ただし、審議でノーという結果が出たら住民投票はなされません。

「行政機関は別に中央集権的でなくてもいい」

FLOC松田:住民投票くらいしか主権者が反対の意思表明をする方法がないにもかかわらず、それすらも極めてやりづらい社会制度になっているというわけですね。

坂井教授:しかし、その住民投票でさえも、意思表示の方法としてはすごくプア(貧弱)ですよ。「300億円の大規模な運動公園はいらない」としても、「小規模ならほしい」人や「中規模ならほしい」人は多いはずです。色々な案が潜在的にはあるわけです。

にもかかわらず、頑張って住民投票をやって何ができるかというと、300億円の原案に対してイエスかノーかしか意思表示ができない。他の案に票を入れることはできません。

FLOC松田:住民投票でさえも意思表示の方法としてはそれほど豊かなやり方とはいえないと。

坂井教授:ええ。なぜそうなっているかというと、意思決定をする仕組みが中央集権的で、市民のニーズをきちんと組み入れる形になっていないからなんです。つまり、非常にセントラライズな(Centralized)仕組みです。

 メカニズムデザインという学問分野では、「行政機関は別に中央集権的でなくてもいい」ということを、1970年代くらいからずっと議論してきました。例えば、行政機関がいくつかのプランを提示して、その中である種の「1円1票」の投票で意思決定する制度があってもいい。グローヴスメカニズムといって、理論的にはそういう制度は作れるんです。そういう制度を使ったら、ある意味で人々の幸福を最大化する意思決定ができます。

FLOC松田:最大幸福が実現するように仕組みを作ることができるのですね。

 

なぜ行政機関はブロックチェーンで「自動政府」へ変わっていかないのか?

坂井教授:理屈としては、オンライン上に政府のような仕組みを置いてもいいんです。僕はそれを自動政府と呼んでいます。

FLOC松田:どのような仕組みでしょうか?

坂井教授:例えば「体育館を作る」であれば、いくつかのプランを行政機関か何かが提示します。それに対して人々が、ある種「1円1票」のような投票をします。投票結果の導出は、けっこう複雑な計算式で決まります。

 そうすれば今の行政機関の形は非常に変わって、「このプランでいく」と決めるわけではなくなる。そもそもプランの提案自体も民間や他の人に任せられますし、どの案を選ぶかは人々の投票によって決まります。そうすると行政というのはやり取りの仕組みを管理する程度の役割で済むわけです。

 ここまでのことは、たとえば『多数決を疑う』の第5章で書いています。ブロックチェーンが必要なのはここから先。この仕組みをBitcoinみたいに分散管理にすると、不特定多数者が管理する政府みたいなものがオンライン上にできるわけです。投票の結果はスマートコントラクトで強制執行。

「制度を変える力がある人のメリットにならないと絶対に変わらない」

FLOC松田:理論的には最大幸福のメカニズムが作れるにもかかわらず、実際の行政がそうなっていなかった理由は何ですか?

坂井教授:いいものがあるのになぜ使われないのかということですね。それは世の中のあらゆる制度がそうなのですが、「いいものは使われる」という発想をつい人間はしがちなんです。これは人間の思考のバイアスで、「公正信念仮説」ですね。いいものは採用される、世の中はフェアだ、とうっかり信じたくなる。現実はそんなことない(笑)

 制度を変える力がある人のメリットにならないと、制度はまず変わりません。それは当たり前のインセンティブの話です。制度を変える人に不利な制度変更というのは、なされない。典型例が選挙制度です。日本の選挙制度を変えるには公職選挙法を変えねばなりませんが、そのためには与党が賛成せねばなりません。しかし今の選挙方式で与党になれた人たちが、それを変えたいかというと、変えたくないですよね。与党の議員が悪人だからではなくて、人間だからそう。

FLOC松田:変える側のインセンティブがないから変わらないということですね。

坂井教授:「変えやすさ」を内包していない制度や組織はダメなんです。環境の変化に対応できない。選挙制度はこの点かなり絶望的です。憲法41条で国会を「唯一の立法府」としているのは問題で、公職選挙法だけは国会の外側に置きたいですね。選挙で選ばれる国会議員に選挙制度を変えろというのは、大変な利益相反ですから。


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この記事の解説者

松田壮一郎

FLOC カリキュラム部

東京大学で生命科学を学んだのち、科学雑誌の編集記者を経て、テクノロジー、金融経済、法律、サイエンスなどを横断する”学問の総合格闘技”としてのブロックチェーンに惹かれ、FLOCに参画。現在、FLOCブロックチェーン大学校 全カリキュラムの企画制作を統括。2019年12月より政策研究大学院大学 政策研究センターの客員研究員として研究活動も行う。

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