P2P(ピアツーピア)ネットワークの仕組みと強み・弱み
ブロックチェーンは従来のネットワークと異なる「P2P(ピアツーピア)」と呼ばれるネットワークを利用してます。 P2P(ピアツーピア)ネットワークの構造と特徴、仕組みを紹介しながら、従来のネットワークとどのような違いがあるのか解説します。


今日は「P2P(ピアツーピア)ネットワーク」について解説するぞ

え? ピアツーピア、、ネットワーク?

ブロックチェーンは、これまでのインターネットのサービスとは別の形のネットワークを作っているんだ。

今までのネットワークとは違う?何がどう違うの?

ははは、そう早まるではない。これからじっくり解説していくぞ。

えー・・・なんか難しそう。今回も分かりやすくお願いします!
P2P(ピアツーピア)ネットワークの構造と仕組み
データ通信を2つに大別すると、クライアントサーバ方式とP2Pネットワーク方式とに分かれます。これまでのインターネットサービスで採用されているのがクライアントサーバ方式。一方、ブロックチェーンはP2Pネットワーク方式を形成しています。
クライアントサーバ方式との違い
クライアントサーバ方式は、クライアントがデータを要求し、中央を司るサーバがデータを提供するというものです。
P2Pネットワーク方式は、クライアントサーバ方式のサーバのような中心的な管理者は存在せず、ネットワーク内で情報が縦横無尽に走るような構造になっています。
P2Pネットワークは、ノード(コンピュータ)同士が必要なデータを融通しあっていることが特徴で、まだいろいろな試行錯誤がありますが、有名なサービスでいうと、ファイル共有ソフトのBit TorrentやSkypeなどが一部P2Pを使っています。
また、ノードはそれぞれ台帳を持っていて、それを全員で維持・監視するという仕組みになっているため、仮に1つの台帳が破損してもネットワーク全体が破損することはありません。
SPVノードとフルノード
ノードには大きく分けて、「SPVノード」と「フルノード」という2種類があります。「SPVノード」はブロックチェーンの一部だけを管理・参照する軽量ノード、「フルノード」はすべてのブロックチェーンを管理するノードです。
ブロックチェーンは最初のブロックから最新のブロックまでが、チェーン状に連なったデータのかたまりであるため、時間の経過とともに合計のデータサイズが大きくなります。
あまりにもデータのサイズが大きくなってしまうと、低価格なモバイル端末や容量が少ないコンピュータでは、ビットコインなどのネットワークに新たに参入することやそれらを扱うことが難しくなってしまいます。そこで、SPVノードのような軽量タイプのノードを許容することで、より多くの人がビットコインを扱えるようにしているわけです。
一方、フルノードは互いにデータを通信しあって、完全なブロックチェーンを維持し続けなければならないため、すべての取引とブロックが揃っている“完全版ブロックチェーン”のコピーを、それぞれのハードディスクの空き容量に保有しています。つまり、フルノードになるには、ある程度の空き容量を確保しておく必要があるのです。
少し技術的な内容なので、イメージしにくい内容かもしれません。FLOCブロックチェーン大学校ではP2Pについてもわかりやすく解説しています。もっと詳しく学びたい方はまず無料体験セミナーを受講してみてください。
P2Pネットワークの強み
P2Pネットワークの強みとしては、次の2点が挙げられます。
その1 サーバダウンによるシステムダウンがない
その2 匿名性が高い
その1 サーバダウンによるシステムダウンがない
一般的なインターネットのサービス、つまりクライアントサーバ方式はデータベースのメンテナンスやソフトウェアのアップデートなど、さまざまなことでサーバの動きを止める必要があるため、サービスの提供を一時的にストップさせることがあります。
あるいは、サーバ自体の故障などによってシステムダウンすることもあるわけですが、P2Pネットワークの分散型では、一部のノードやネットワークに故障があり、ダウンすることがあったとしても、ネットワーク全体としては生きていくことができます。
ダウンから復旧したら、問題のないノードからデータを取得し、正しいデータを保持することができるのです。この仕組みによって、ビットコインは10年間ほぼ無事故無停止で動いています。
このような分散型のネットワークを停止させるためには、フルノードをすべて破壊する必要があります。ビットコインには現在1万程度のフルノードが存在しています。分散している地域には偏りはあるものの、十分に分散している状況ですので、それらすべてを破壊することは難しいといえます。
インターネットの世界では、常にDDoS攻撃(Distributed Denial of Service Attack)と呼ばれるシステムダウンを引き起こす攻撃が行われているため、ネットワークの一部がダウンしてもシステム全体が機能し続けるこのような仕組みがあることはとても重要となります。
クライアント・サーバー方式は中央のサーバが標的にされ、それによってシステムダウンが引き起こされますが、P2Pネットワークは分散されているがゆえに攻撃への耐性に優れているという点が強みとなります。
その2 匿名性が高い
もう1つの強みは、匿名性の高いネットワークが作りやすいということです。
P2Pネットワークは管理者が存在せず、参加者のノードをチェックする機関も無いので、各ノードが特定されないという意味で、ネットワークの匿名性が高くなりやすい傾向にあります。
仮想通貨の議論においては、取引履歴(誰がいくら売り、誰がいくら買ったか)の匿名性について批判されることがあります。しかし、ビットコインのようにパブリックチェーンで取引される仮想通貨は、取引履歴がすべて公開されているので、匿名性はそれほど高くありません。
とはいえ、一部の仮想通貨は取引記録を完全に秘匿できるうえに、暗号化通信を使ってどこからアクセスしたか分からなくする細工が行われると、高レベルの匿名性で送金できてしまいます。
また、世界の取引所では本人確認を厳格に行わないところもあり、マネーロ ンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与対策の観点から警戒が強まっている現状でもあります。
しかし、今後は世界的に、日本のように厳格に本人確認を行う方向に、規制が強化されていくと考えられます。
P2Pネットワークの弱み
一方、弱みとしては次の2点が挙げられます。
その1 取引データの承認に時間がかかる、データの一貫性を保ちにくい
その2 管理者がいないことによる悪用のリスクを抱える
その1 取引データの承認に時間がかかる、データの一貫性を保ちにくい
ネットワークに参加するノードが増えれば増えるほど、データを伝達していく相手が増えるため、取引の承認に時間がかかってしまうという弱みを抱えています。
クライアントサーバ方式では、サーバ1ヶ所でデータ管理をしているので、スピーディーな取引ができる。1ヶ所が管理をしている方が圧倒的に早くて効率がいいのです。
また、データを伝達していくにあたって、P2Pネットワーク上にデータが行き渡るまでに、若干のタイムラグがあるため、データの一貫性が保ちにくいという面もあります。
その2 管理者がいないことによる悪用のリスクを抱える
管理者がいないことによって匿名性の高いネットワークを作ることができるといいましたが、その反面、悪いことに使おうという人たちを潜在的に抱え込むことになります。さらには、検閲ができませんので、ウイルスや嘘の情報が一度拡散されてしまうと削除できないという問題が発生するのです。
これらは主にパブリックチェーンにおける問題で、このような弱みを解消するために、特定の管理者がノードの参加を限定するプライベートチェーンやコンソーシアムチェーンがあるといえるでしょう。
ブライベート(コンソーシアム)チェーンの仕組み
パブリックチェーンの弱みを解決しよう考えられたのが、ブライベート(コンソーシアム)チェーンです。これは、ネットワークに参加できるノードは管理者に許可されたものだけ、というものです。取引の承認も権限あるノードのみで行うので、スピーディーな検証と承認を行うことができます。
ただし、管理権限を持つノードが不正を行う可能性はありますし、そこが故障したり攻撃されたりすることでダウンした場合、システム全体が止まってしまうという危険性はあります。
「P2Pネットワーク」とひとくちに言っても、パブリックかプライベート(プライベート)かで、その特徴は大きく変わりますので、用途に応じて使い分ける必要があります。
まとめ
今回は、「P2Pネットワーク」の構造と特徴、仕組みを紹介しながら、従来のネットワークとはどのような違いがあるのかを解説しました。従来のクライアントサーバ方式との違い、パグリックチェーンとプライベート(コンソーシアム)チェーンとの違いを知ることで、「P2Pネットワーク」の強みと弱みを実感し、目的によって使い分けることが重要だと感じていただけたのではないでしょうか?
今後も、ブロックチェーン初心者の方に向けた分かりやすい記事をお届けしたいと思います。